徘徊老人と徘徊する。
台風一過の激晴れの午後。
所用で出かける。
公園横の道を小さなボストンバッグを持ったかなり高齢の婆さまが立っていた。
髪は真っ白だけど、かわいらしいふくよかな感じの婆さま。
年の頃は完全八十は行ってるだろうか・・。
一歩踏み出すも・・足取りはヨタヨタ、ヨボヨボ。
もうバックを持って歩く力もないように見えた。
木陰と葉いえ、セーターを重ね着していて暑そうな服装。
その間にも何度もバッグに手をかけては放すを繰り返す。
一歩進むのも大変な様子。
バッグを持ちたいけど、持ち上がらないし、足元もおぼつかない。
もう自立して歩ける状態じゃない感じ。
どっから来たのか?
『おうちは近くなんですか?』と声をかけて見た。
アタシはてっきり家に帰るのだと思い込んでいたのよ。
すると、婆さまは、家はその角を曲がったところだと指さして言った。
それならば・・と、バッグを持ってあげて手を引いて角までゆっくり
一緒について歩いた。
『角を曲がったら横から入れるから』という。
しかし、曲がったところに婆さまの言う家は無く、いきなり・・
少し先に見えるマンションを指さして、下駄箱があるね。と・・(゚Д゚)ノ?
更に、昨日の台風で道の端は木の葉だらけで歩きにくい。
婆さまは、汚い汚い、歩けないと言う。
何か会話が変な・・。
とにかくまた先の角を指さしてあの角まで連れて行ってくれれば、
家だからという。
その二回目の角でも家なし。
本当にこの辺なのかな・・と疑問が湧き、この前のお宅で庭掃除していた
爺さまに婆さまから聞いていた苗字を聞くと、
この辺には無いよ、こんな人見たことないという。
エ?
やはりこの辺のヒトじゃないのか?
更に婆さまは、、あそこの角まで連れて行ってくれたらあとは自分で・・と、また指刺す。
車は殆ど来ない広い通りをヨタヨタと渡り、角についたが・・家無し。
とにかく、日陰で婆さまに待ってもらってその先の角の周辺で表札を見て
家を探すものの無い。
えー、、どういう事?
気を落ち着かせようと、冷静に婆様を見た。
黒い襟が滅茶苦茶だったので直してあげる。
洋服をよく観察する。
セーター、スモック、黒いブラウス・・うわっっ。
黒いブラウスの下には明らかに寝巻きっっ、、パジャマだよーー(;゚Д゚)
更に茶色のスラックスに茶色のかかとの低い革靴。
おわわっ、茶色で統一されているけど、靴は明らかに別物っっ。
左右別々の靴を履いていた。
に、認知症の徘徊かも・・と急にストンと合点がいく。
携帯で警察に電話。
今いる場所の目印を伝えて、苗字は聞いたけど、その婆さまの家がわからないし、
婆さま自体が一人ではもう歩く事が無理そうだと話す。
警察が来てくれることになった。
丁度そこに、家から顔を出したアタシより少し上の年配の女性。
婆さんの事を話したら、婆さまの顔は分からないけど、その苗字の家を知っている・・
というじゃありませんかっっ。うわーんっっ、神の使いか〜っっ(;゚Д゚)
更に、その人が言うには家とはまったく別方向へ歩いていた。
婆さま宅からはドンドン離れて行っていたのだ。
その家のお嫁さんと知り合いだから早速その家に電話してくれるという。
おおーーー。号泣
イヤーもう、どうなるかと思ったけど、、もう本当に助かった。
その後は、警官が二人来て、婆さまの息子夫婦が来て・・
アタシと家族に連絡してくれた女性とで簡単な事情聴取の後、解散。
息子が『どこに行こうとしてたの?』
婆さま『ああ・・?』
なんか、当初声かけた時は徘徊しているとはわからなかった。
まともな婆様に見えた(服装がまあ身ぎれいだだったからまだ初期かな)
ともかく、認知症で徘徊となると、やはり細かく観察すると、、
服装とか、どこかおかしい所はあると思った。
しかし、暑い中・・一時間近く外でワーワーやっていたことになる。
徘徊に付き合ってしまつた。
疲れた。ふう。